ファッション界の大人の恋愛劇がホラーに転じる瞬間を見よ! 映画「ファントム・スレッド」 (夕刊フジ)

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 映画「ファントム・スレッド」(公開中)は一見すると優雅なファッション界の物語なのだが、進むにつれて男女のホラーを見るように意外な展開にゾクッときた。

 1950年代のロンドン。オートクチュールの仕立屋ウッドコックは社交界で脚光を集め、ベルギー王女のドレスも手がけるほどの伊達男。壮年まで独身主義者だったがある日、休養先のレストランで若いウエートレスのアルマを見初める。女として、というより完璧な体形に服飾家としての魂を揺さぶられモデルとして囲うことに。

 男の本性は亡き母の影を慕い、実務を仕切る姉に頭が上がらないマザコンでシスコンの超仕事人間。方や、田舎育ちでガサツだが心底男に惚れ込んだ女は、厳格だった男のペースを乱しまくる。「出ていってくれ!」とまで言われるが、恐るべき手段で、いつのまにか男を手なずけてゆく…。

 まるでオペラのようにクラシカルな映像と音楽の様式美に陶然としていると、主人公のようにじわじわと女の毒気にあてられ、予想外にぶっ飛んだラストに愕然とするはずだ。

 本作で引退する憑依型のダニエル・デイ=ルイスは裁縫師のもとで1年間衣装作りを学んでドレスを縫えるまでになって仕立屋役に挑んだ。この怪優と対等に渡り合いながら、どんどん美しくなってゆくアルマを演じる若手のヴィッキー・クリープスも実に見事。鬼才ポール・トーマス・アンダーソン監督の意欲作だ。

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